FRANKEN

ある種の閉塞感から生まれた「GROOVER」

GROOVERは2006年にメガネナカジマのプライベートブランドとして誕生しました。その当時、90年代から続いていた「コンセプトメガネ」というバブル的なメガネブームがあり、ヨーロッパのデザインブランドが日本でも飛ぶように売れていた華々しい時代です。その代表格と言ったら、もちろんアラン・ミクリ。それにテオやICベルリンなど、世界中のデザイナー達が次々と新しいデザインを競い合っていた懐かしい時代です。そんな活気あふれるメガネデザインを見ていた日本の若手デザイナー達も、それに続けと新しいブランドを次々に立ち上げ順調に売上を伸ばしていました。

メガネナカジマではそんな国内外のブランドを数多くセレクトしていましたが、ある日「このデザインって本当に凄いのか?」という疑問を抱くようになりました。メガネを知れば知るほど疑問は増すばかり。どのブランドも売れ筋を狙った似たようなデザインのメガネを、毎シーズン出してきます。現在も状況はあまり変わりませんが、そういったマーケットの売れ筋を狙ったデザインをしているブランドをチヤホヤする風潮に嫌気が差しました。

そこで「アイテム数は少なくても良いから自分がストレス無く365日間掛けられるメガネを作りたい」と思い、立ち上げたプライベートブランドが「GROOVER」でした。その最初のプロダクトとなった「SEDONA」は、今でも大好きなモデルであり続けています。



FRANKENが生まれた背景

2015年にGROOVERは自社生産工場「GYARD」を立ち上げました。日本のメガネ作りは福井県鯖江市が有名ですが、GYARDは神奈川県横浜市に設立しました。工房レベルでは無い工場の規模として、関東唯一のメガネ生産工場になります。2011年まで東京の柴又に最後に残ったメガネ生産工場「敷島眼鏡」の元工場長をはじめ、数人の職人さん達が集まってくれました。メガネ店が工場を始めたと聞くと、素人レベルで下手の横好きのように思われる事も多いのですが、実は日本最古のメガネ作りを継承しています。東京のメガネ作りの歴史は鯖江よりも古く、100年以上前に鯖江へメガネ作りを教えたのは東京と大阪の職人たちでした。GYARDはそんな一番古いメガネ作りを継承した工場です。

GYARDは当初、アセテート製のみのオールプラスチックフレーム工場として産声を上げました。FRANKENのようなプラスチックとメタルパーツを組み合わせた“コンビネーション”フレームを作ることが出来ない設備だったのです。しかし、オールプラスチックフレームの生産が軌道に乗った1年後、大規模な設備投資を行い“コンビネーション”フレームを作れるようになりました。どうしても“コンビネーション”フレームを作りたかったのです。

GYARDの“コンビネーション”フレームは、オーセンティックな製法で作られるため、独特な風合いがあります。この風合いを世界のどの工場でも出すことが出来ません。その理由は「手作業」にあります。GYARDは敢えて手作業を多く残す製法にこだわっています。手作業の工程を多くすると生産数が伸びません。ですので、今の日本のみならず、世界のほぼ全ての工場は工作機械で大量生産をしています。手作業のカッティングは独特の丸みとエッジを紡ぎだし、それが独特の風合いとなるのです。「それがどれだけ見た人に分かるんだ?」と聞かれた事がありました。正直言いましてほぼ理解してもらえないだろうと思っていました。しかしGYARDから生み出されるメガネは、海外のメガネバイヤーの人たちにひと目で違いを見抜いて頂き評価をしてくれました。今では生産数の約7割を輸出するまでになりました。



ヴィンテージにも無いオリジナルデザイン

さて本題のFRANKENを紐解いていきます。
GROOVERは一見すると、ヴィンテージメガネを参考にデザインされていると思われる方がいらっしゃるかと思います。しかし、GROOVERのデザインは過去に存在しているデザインのものはありません。もしかしたら部分的に似ている箇所があるかも知れませんが、全体としてフルオリジナルデザインであることを大事にしています。

フランケンは独特なノーズブリッジを持つ「サーモントブロー」という構造のメガネで、こういったブリッジを持つサーモントブローはありません。そして少し変則的なレンズシェイプはGROOVERだけのものだと考えています。





またFRANKENというネーミングは、GROOVERが「モンスターシリーズ」という、ちょっとファニーなのだけれども真面目な印象をテーマとしたシリーズとして当時リリースされました。今ですとクラシック感やヴィンテージ感を醸し出すモデルとして定着していますが、元来少し遊び心のあるメガネとしてのコンセプトを持ち合わせています。もしかしたら、そんな違和感が不協和音となって皆様からご支持を頂いているのかもしれません。





FRANKENは46サイズという非常に小さいサイズでデザインされています。46サイズというのは、レンズの横幅が46mmであることを示しています。日本人男性ですと50サイズ以上ないと、小さいメガネという印象があります。後にFRANKENはサイズアップしたFRANKEIIIという50サイズのモデルをリリースしますが、46サイズのフランケンに根強く人気があります。



コンビネーションフレームこそがGROOVERの醍醐味

GROOVERを語る上で、コンビネーションフレームを外すことは出来ません。GYARD製プラスチックフレームの表面の輝きや艶の輝きをご評価を頂く事が多いのですが、世界でもあまり作る事が出来なくなったきた旧来製法のコンビネーションメガネに真髄があると考えています。これはメガネ作りにおける製法やデザインの調和から生み出されています。そして、GROOVERが自社工場を設立してまで表現したかった一つの形でもあります。

GYARDのマスタークラフトマンである渡邉修一氏いわく「手作業で行うヤスリがけの1回1回もデザインの一部である」と言います。少し精神世界に近いのかも知れませんが、GROOVERを創り出す一人ひとりの情熱によってメガネにオーラが宿っていくのだと信じております。

最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございます。


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